forget me

灰色のアスファルトが熱されて真夏に地獄を作り出し


10年以上前に急いで建てられた家が


今が好機だと大きくなる緑の手に覆われていく


そんな夏だった






「薄い色の外壁はナンセンスだ」

彼女の唇は開かない

蝉の声が耳から体に向かって汗をかけと命令する


半分開かれた瞼の隙を紫外線が狙う


「汚れたら塗り直すのが大変なのに、白い壁はイタリアだけで十分だ」


弾んだブランコを思い返す


あの年も暑かった


陽射しが鉄を暖めすぎて


融けないかと心配した彼女の細い腕


あのブランコに掴まった細い腕は引力を支えられていたのか

「…なあ、お前」


彼女は


あの子は


もう


ブランコには乗れない